自動販売機で使えない1万円札があるのはなぜ?識別機が見ている4つのポイント

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自動販売機の紙幣投入口にお札を入れようとしている手元のイメージ

アルモットくんの!「5秒」で分かるコラムの要約

アルモットくん

自販機で1万円札が使えないいちばんの理由は、実は「識別できないから」じゃなくて「おつりが出せないから」!150円の買い物に9,850円の釣銭を機械の中に用意しておく必要があるんだ。そのうえで識別機は寸法・磁気・光の透過・赤外線の4つを同時に見て本物かどうかを判断しているよ。

飲み物を買おうとしたら、投入口の上に「1,000円札のみ」と書いてある。財布には1万円札しかない。自動販売機の前で立ち尽くした経験は、多くの人にあるはずです。

自販機で1万円札が使えないのは、機械が高額紙幣を見分けられないからだと思われがちです。けれども理由はもう少し現実的なところにあります。そして「見分ける」という機能そのものも、想像よりずっと精密なことをしています。

通貨処理機を作っているメーカーとして、この投入口の向こう側で何が起きているのかをご説明します。

1万円札が使えない、いちばん現実的な理由

自動販売機の釣銭返却口とコインのイメージ

技術の話をする前に、もっと身も蓋もない理由から片付けます。おつりです。

150円の飲み物を1万円札で買われた場合、機械は9,850円を返さなければなりません。しかも硬貨で。500円玉が19枚、100円玉が3枚、50円玉が1枚。これだけの釣銭を、常に機内に確保しておく必要があります。

設置台数が多ければ、その全台に同じだけの現金を眠らせることになります。しかも釣銭が尽きれば「釣銭切れ」で販売が止まる。補充のために人が回る手間も増えます。1万円札に対応することは、機械にとっては「大量の現金を常時抱え込むこと」とほぼ同義なのです。

加えて、高額紙幣は偽造による被害額が大きくなります。1,000円札を偽造されるのと1万円札を偽造されるのでは、1回あたりの損失が10倍違います。屋外に無人で置かれる機械ほど、この差は慎重に扱われます。

「使えない」にも種類がある

そもそも高額紙幣を受け付けない設計になっている機械と、受け付ける機能はあるが釣銭が少ないため一時的に使用不可になっている機械があります。「1万円札が使えません」のランプが点灯しているタイプは後者で、釣銭が補充されれば再び使えるようになります。

紙幣識別機が見ている4つのポイント

では、機械はどうやって本物の紙幣を見分けているのでしょうか。挿入されたお札が数十センチ搬送される、そのわずかな間に、複数のセンサーが同時に働いています。

  • ① 寸法と搬送状態
    日本銀行券は金種ごとに寸法が定められています。一万円券は76×160mm、五千円券は76×156mm、千円券は76×150mm。縦は共通で、横の長さで金種が分かれる設計です。まずこの物理的な形が合っているかを確認します。斜めに入った、折れている、角が欠けているといった状態もここで検出されます。
  • ② 磁気の分布
    紙幣の印刷には磁気を帯びたインキが使われている部分があります。どこにどれだけの磁気があるかというパターンは、金種ごとに決まっています。カラーコピーでは再現できない要素のひとつです。
  • ③ 光の透過と反射
    紙幣に光を当て、透けた光と跳ね返った光の両方を読み取ります。すき入れ(いわゆる透かし)は紙の厚みそのものを変えて作られているため、透過光で見ると明確な濃淡として現れます。印刷で真似た「透かしのような絵」とは、透過光での見え方がまったく違います。
  • ④ 赤外線での見え方
    人の目には同じ黒に見えるインキでも、赤外線を当てると「見える色」と「見えない色」に分かれます。この赤外線での濃淡パターンも、紙幣ごとに固有です。肉眼で完璧に似せても、この層で弾かれます。

なぜ4つも見る必要があるのか

ひとつの要素だけで判定すれば、機械はもっと安く、もっと速く作れます。それでも複数の層を重ねているのは、ひとつの偽造技術ですべてを同時に突破することが極めて難しいからです。

寸法を合わせるのは簡単です。色を似せるのも、高性能なプリンターがあれば不可能ではありません。しかし磁気インキの分布を再現しながら、同時に紙の厚みでできたすき入れを作り、さらに赤外線での濃淡まで一致させるとなると、必要な技術と設備は一気に跳ね上がります。

2024年7月3日に発行が始まった新しい一万円券・五千円券・千円券には、肖像の3Dホログラムや高精細なすき入れ模様など、さらに進んだ偽造防止技術が盛り込まれています。紙幣の側が進化すれば、それを読む機械の側も更新が必要になります。新紙幣が出るたびに全国の機械が改修されるのは、このためです。

お札が戻ってきてしまうときに起きていること

しわの寄った紙幣を伸ばしている手元のイメージ

本物なのに何度入れても戻ってくる。これは機械が「偽物だ」と判断しているわけではなく、多くの場合「読み取れなかった」という状態です。

状態 読み取りへの影響
四つ折りの折り目が強い 搬送中に浮きが生じ、センサーとの距離が変わって測定値がぶれる
端が破れている・欠けている 寸法判定で規定外と判断される
濡れている・湿っている 光の透過特性が変わり、すき入れの判定が不安定になる
極端に使い古されている 印刷のかすれで磁気・赤外線のパターンが薄くなる
テープで補修してある 厚みと光の透過が局所的に変化し、異常として検出される

折り目を伸ばしてから入れ直すと通ることがあるのは、①の搬送条件が改善されるからです。それでも通らない紙幣は、窓口で交換してもらうのが確実です。

1万円札が使える機械が増えている理由

一方で、券売機や精算機では1万円札が使えるものが一般的になってきました。自販機との違いはどこにあるのでしょうか。

ひとつは客単価です。飲食店の券売機で3,000円の食事を買うなら、必要な釣銭は7,000円。150円の飲み物より釣銭の負担が小さくなります。もうひとつは設置環境で、店内や施設内にある機械は人の目が届き、釣銭の補充や機内現金の回収も日常業務の一部として回せます。

そして三つめが、キャッシュレス決済との併用です。現金以外の支払い手段が増えれば、機内に滞留する現金そのものが減ります。「1万円札に対応するかどうか」は、技術の問題というより、現金をどれだけ抱えられるかという運用の問題なのです。

数えるだけではない、識別という仕事

ここまでは機械にお金を入れる側の話でした。視点を変えると、集まった現金を受け取って数える側にも、同じ識別の技術が使われています。

店舗や施設の売上金、団体の集金、金融機関の窓口業務。紙幣を大量に数える現場では、速さと同じくらい「混ざっていないか」が重要になります。1万円札の束に千円札が1枚混ざっていれば、9,000円の誤差がそのまま発生します。目視の確認では、疲労と焦りのある時間帯ほど見落としが起きます。

グローリーの紙幣計数機は、この「数える」と「見分ける」を同時に行う機械です。

数え間違いと金種の混入を、機械が同時に防ぐ

紙幣計数機 GFB-90-F 商品イメージ
紙幣計数機 GFB-90-F(新紙幣対応機)
毎分1,800枚のハイスピード計数に対応した紙幣計数機。指定以外の紙幣が混入していた場合にセンサーが自動検知して計数を止める異金種検知機能と、重なった紙幣を見逃さない2枚検知機能を搭載しています。ホッパーには紙幣を一度に多数セットでき、セットするだけで計数が始まり、終了すると自動で停止します。計数スピードは4段階で切り換え可能。2024年発行の新紙幣にも対応しています。
商品詳細を見る

まとめ

紙幣を計数機にセットしている手元のイメージ
ポイント 内容
使えない主な理由 釣銭を大量に抱える必要があること。加えて高額紙幣の偽造被害額の大きさ
識別の4要素 寸法・磁気の分布・光の透過と反射・赤外線での見え方
重ねて見る理由 ひとつの偽造技術で全層を同時に突破することが極めて困難だから
戻ってくる原因 折れ・破れ・濡れ・かすれ・補修跡。多くは「読み取れない」状態
券売機で使える理由 客単価が高く釣銭負担が小さい、運用で現金を回せる、キャッシュレス併用

投入口にお札を入れてから判定が返ってくるまで、わずか1秒ほど。その間に機械は、寸法を測り、磁気を読み、光を透かし、赤外線を当てています。断られたときは少しだけ、その仕事ぶりを思い出していただければ幸いです。

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